平成29年度第3回被災地訪問のご報告

 法友会東日本大震災等復興支援特別委員会は,平成30年3月2日(金)~3日(土)の日程で,被災地訪問に行って参りましたので,ご報告致します。平成24年12月の第1回目の訪問から数え,今回が17回目の訪問となります。主な行き先は,宮城県気仙沼市と毎年3回目の被災地訪問で定点観測を実施している岩手県陸前高田市で,今回は委員以外の方や初参加,若手の方にも多数ご参加頂き,参加者計29名と大盛況となりました。

 まず1日目,午前9時頃のはやぶさで東京駅を出発する予定が,東北地方側での強風により新幹線が運休・遅延となり,到着が1時間30分程遅れるというトラブルに見舞われましたが,午後に予定していた訪問先の方々に時間変更に快諾頂けたため,何とか事なきを得ました。
 一ノ関駅到着後,貸し切りバスで気仙沼市役所に向かい,道中,予め予約しておいた駅弁のうにごはんを頂きました。気仙沼市役所では,市職員の方や任期付公務員の弁護士の方との意見交換会の場を設けさせて頂き,復興の状況と課題や,現在当委員会の津波・地震被害復興支援PTが取り組んでいる災害公営住宅の家賃値上げ問題への対策等のお話も伺いました。
 同問題では,大きく分けて,収入基準月収15万8000円以上の収入超過者世帯では入居後3年を経過すると家賃が毎年増額していき,最終的に建設コスト等から算出した近傍同種家賃に至るという問題と,「東日本大震災特別家賃低減事業」により負担軽減措置が採られている月収8万円以下の低所得者層世帯では入居後5年から家賃が増額していき11年目に本来家賃に戻ってしまうという問題があります。昨年末頃に復興庁から被災3県の各地方公共団体宛に条例等により家賃減免等の独自措置を採ることは可能との見解が発表されたところであり,現在各自治体において対応を検討しているところです。
 気仙沼市では,収入超過・低所得者いずれの世帯でも入居から10年目まで現状の家賃で据え置くという独自措置を採ることにしたとのことでした。

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 その後,例年宿泊しているサンマリン気仙沼ホテル観洋に移動した上で,過去の被災地訪問で何度もお世話になっている陸前高田の語り部の釘子明様と合流しました。そして,陸前高田市唯一の弁護士である瀧上明先生(弁護士法人空と海 そらうみ法律事務所陸前高田事務所所属)にお越し頂き,講演して頂きました。瀧上先生は通常の法律業務のみならず,復興支援に関する業務を含め,非常に多岐に亘るご活躍をされており,市内の法律相談を一手に引き受けているため,相談内容の傾向や推移,被災地独自の実務,課題等まで非常に詳細に精通されていました。

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 ホテルでの夕食には,瀧上先生や気仙沼市役所でお話を伺った任期付公務員の先生のほか現地の弁護士にもお越し頂き,懇親を深めることができました。その後は,ホテル内での二次会,三次会と楽しい夜を過ごしました。

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 2日目の午前は,陸前高田市栃が沢県営公営住宅に向かいました。同公営住宅には1年前にも伺っていましたが,自治会会長は当会幹事長の名前まで覚えて下さっており,快く迎えて頂きました。そして,昨年同様,公営住宅の住民の方と一緒にラジオ体操をしました。一般的なラジオ体操に加え,独自の体操も複数取り入れており,20分以上の長時間の体操でしたが,高齢の方も皆で寄り添って元気に体を動かされているのが印象的でした。

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 その後は,公営住宅の住民の方と交流お茶会をするグループと,陸前高田市議会議員福田利喜様から「災害公営住宅の家賃問題に対する陸前高田市議会の対応」について講演を伺うグループとに分かれました。
 前者では,住民のほとんどは一軒家だったためそもそも共同住宅に慣れていない上,広い地区から寄せ集められ300世帯程の共同住宅となったため知り合いも少なく,当初自治会を立ち上げていくことすら大変だったというお話や,市営と違って県営の災害公営住宅は,県の事務所が近くにないため,気軽に相談などにも行けず,市が対応してくれるわけでもなく困っているといったお話,一番の問題は災害時の緊急事態であるのに既存の法律をそのまま適用しようとすることといったお話など具体的な苦労話,課題等を多く伺えました。

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 後者の岩手県の災害公営住宅の家賃に関しては,上記のとおり収入超過世帯では入居3年後から家賃が毎年増額していき,最終的に建設コスト等から算出した近傍同種家賃に至るが,それに従うと釜石市内で最も早い時期の平成25年度に整備された平田アパートでは7万7400円に至るのに対し,建設コストが上がっている平成28年度に完成した片岸アパートでは14万5400円に至ってしまうため,岩手県は,県内の全ての県営災害公営住宅の家賃上限額を上記平田アパートの7万7400円に減免するよう条例の施行規則を改正したということでした。ただ,それでも民間アパートに比べると高く,市外流出の恐れなどもあるなど,気仙沼市とはまた異なる問題状況を認識できました。

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 大隅つどいの丘商店街の陸丸さんで昼食を取った後は,2017年4月27日にオープンしたばかりの大型複合商業施設のアバッセたかたに立ち寄りました。旧市街地に12m程かさ上げした土地で開業され,今後のまちづくりの中心に位置付けられています。ただ,同施設自体は賑わっているものの,その周辺を見渡すと,かさ上げ・工事途中の土地や更地が広がっているなどまだまだ復興途上にあるという対比的な風景が印象的でした。

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 その後,大船渡土木センター復興街づくり課の方の引率の下,普段は立入禁止の高田松原の防潮堤付近に入って見学させて頂きました。津波の高さは14.5mであったものの,何十年,何百年に一度のレベルの津波に備えようと防潮堤を高くしようとすればキリがなくなり,建設費や維持費のコストとの兼ね合いもあるため,それよりもハード面だけでなく防災計画や避難経路確保などソフト面でも両面から防災に備えることが合理的といった議論を重ね,新たな防潮堤の高さは12.5mとなったという経緯を伺えました。また,かつての高田松原の景色を取り戻すべく新たに何百,何千本の苗木が植樹されている景色や数十年に亘って見守っていくといったお話は心に響くものがありました。

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 そして,奇跡の一本松を見晴らせる一本松茶屋駐車場にてお土産を買わせて頂いてから,バスで一ノ関駅に向かい,帰路に着きました。
 今年度の被災地訪問はこれで終わりですが,次年度以降も引き続き実施していく予定ですので,次年度以降も多くの方のご参加をお待ちしております。