東京弁護士会公設事務所オープンオフィス参加報告

東京弁護士会の公設事務所についていろいろ聞きますが、どんなところで、どんな弁護士が、どんな仕事をどうやっているのだろうと思ったことはありませんか? 東京弁護士会のオープンオフィスの企画に法友会広報特別委員会で参加し、公設事務所について知見を深めてきました。

1 オープンオフィス —弁護士法人北千住パブリック法律事務所—

2024年1月18日、北千住パブリック法律事務所の“オープンオフィス”に参加し、同事務所を見学しました。
同事務所は今年で開設20周年を迎えるとのこと、現在、所員17名、事務員14名の陣容です。
小菅の東京拘置所まで1駅という北千住に立地していることからもわかるとおり、開設当初からとくに刑事弁護には力を入れており、これまで25件の無罪判決を獲得するなど、めざましい活動を展開しているとのこと。もっとも、刑事弁護だけでなく、民事・家事・債務整理その他地域密着型の弁護士活動(地元足立区は、東京23区でも所得水準が低く、また、高齢化率が突出しているとのことです。)、弁護士過疎地へ赴任する弁護士の要請、インターンシップの受け入れ、エクスターンシップを通じての未来の司法を担う人材の育成など、所員の先生方はチームワークを生かしながら多岐にわたる取り組みに熱心に励んでおられます。

事務所内は、大きく、全弁護士が執務する、デスクはパーテーションで区切られているもののお互い広く見渡し合うことができる大部屋の執務室と、事務局スペース、そして、3つの面談室に分かれており、お邪魔した際は夕刻で静かでしたが、日中は相当の活気にあふれているであろう様子がうかがえました。

毎年複数名の新人弁護士を採用しており、今年もすでに3人、新進気鋭の弁護士の入所が内定しているとのこと。ただし、若手の指導にあたれる、いわゆる中堅からベテランの弁護士層がやや手薄で、また、現状所長弁護士が不在であること(オープンオフィス当日もご案内をくださった鈴木加奈子弁護士(59期)、酒田芳人弁護士(62期)の2名の副所長を中心に事務所運営されているとのこと。)などが懸案とのことでした。もっとも、OB弁護士、さらには、刑事弁護に関心をもつロースクール生なども参加しての活発な交流、さらには各種研修への講師派遣などを通じ、むしろ所員弁護士が指導的な役割を存分に果たしていることがうかがえ、非常に心強かったです。

頭書のとおり開設20周年を迎える今年11月29日、クレオで記念のイベントも開催されるとのことです。ぜひ、ひとりでも多くの会員に参加いただき、さらに“北パブ”の意義、活動内容を知っていただければと思います。

(文責 2023年度広報特別委員会委員長 市川尚)

1_北千住パブリック法律事務所1_受付
2_北千住パブリック法律事務所2_カウンター

2 オープンオフィス —弁護士法人東京パブリック法律事務所—

令和6年1月23日、弁護士法人東京パブリック法律事務所の“オープンオフィス”に参加し、同事務所を見学しました。東パブは今年で開設22周年を迎えるとのことで、現在、弁護士16名、事務職員(正規)11名の陣容です。従来の所在地から2年前に移転し、事務所面積はそれまでの3分の1に減少しました。 

東パブは、区役所などの職員向け直通ダイヤル「パブクロウ」を開設しており、行政機関や社会福祉協議会と密接に連携しています。23区の西北に位置していることから、近隣の豊島区・練馬区・板橋区・北区の4区との結びつきが特に強いです。外国人の法律事件や成年後見に力を入れていることも特徴です。弁護士過疎地へ赴任する弁護士の養成、弁護士過疎地から帰任した弁護士の受け入れ、裁判官や検察官の他職経験受け入れなど、人材の養成や交流にも積極的に取り組んでいます。

事務所内は、大部屋の執務室と面談室6室で構成されています。大部屋の執務室は、①成年後見、②債務整理、③外国人、④一般民事・家事・刑事の4つのブロックに大きく分かれています。それぞれのブロックの中で、弁護士と事務職員は机を並べて混在し、業務を進めています。

代表社員の谷口太規先生(58期)が若手弁護士に細かく目を配っており、事務所内は温かい雰囲気です。東パブの先生方が困難を抱えた依頼者と向き合い、時間をかけて事件に取り組んでいることを知り、東京弁護士会が社会正義の実現に向けて果たしている役割を実感できました。

(文責 2023年度広報特別委員会委員 弓田竜)

3_東京パブリック法律事務所1_受付
4_東京パブリック法律事務所2_パブクロウ

3 オープンオフィス —弁護士法人多摩パブリック法律事務所—

令和6年2月22日、弁護士法人多摩パブリック法律事務所のオープンオフィスに参加しました。
多くの所属弁護士も同席され、多摩地域や多摩パブリック法律事務所(以下「多摩パブ」といいます)について、スライドでご紹介をいただき、事務所内も見学させていただきました。
多摩地域は、東京の司法過疎地であり、多摩地域の人口が23区の人口の約半分にもかかわらず、市民1人あたりの弁護士数は10分の1以下とのことでした。そして、司法過疎地だからこそ、多摩地域に公設の事務所の意義があるとのことでした。
多摩パブは、本所(令和4年10月に現在の場所に移転)のほかに近隣に支所があり、所属弁護士が13名(内2名が支所)、職員が約19名(内約6名が支所)となっています。本所には、打ち合わせ室が5室、会議室が1室、書庫等もあります。
執務室は大部屋となっており、事務局と弁護士の行き来がしやすいレイアウトになっており、弁護士の机がパーテーション代わりとなっており、天井に近いところは吹き抜けとなっており、他の弁護士がどのような電話をしているのかなど何となく雰囲気が伝わってくるオープンな作りになっていました。
多摩パブの名物としては、弁護士と事務職員とが一緒に、市町村役場、社会福祉協議会、地域包括支援センターなどを定期的に回り、パンフレットや「たまパブ通信」、「相談連絡票」などをセットしたものを配布しながら、いわゆる「御用聞き」をして地域を回る活動をしているとのことでした。
取扱事件としては、受任事件の約50%が債務整理事件や自己破産事件等で、受任事件の約80%が法テラス利用となっており、多摩パブとしても積極的に法テラス利用を勧めているとのことでした。
出張相談にも柔軟に対応し、そのほかケース会議、講演会や研修会も積極的に主催したり、消費者生活センターなどの外部機関とのアドバイザリー契約、事例検討会の実施、各種会議への委員、相談員などにも就任し、また、法曹養成や刑事弁護にも力を入れているとのことです。
多摩パブの特色は、なんと言っても高齢化によるニーズに応える後見支所を設け、弁護士・ソーシャルワーカー・専任事務職員のチームで後見事件に取り組むことによって、弁護士が法的判断等に専念できるようにした結果、約200件の後見事件等を受任できる体制を取っていることです
多摩地域を回り、「御用聞き」をしたり、地域の外部機関との恒常的な関わりを持ち、地域の高齢者のニーズにも応える体制を作ったりと、まさに多摩パブは「地域との連携」をとても大切にしていることが分かりました。事務所内も見学させていただき、雰囲気もとても良いことが伝わってきました。
将来的には、多摩地域に司法が行き渡り、パブリック事務所がいらなくなることが目標であるというお話も伺い、目標に向けて皆さんがとても生き生きと精力的に活動されていることが良く分かりました。今回のオープンオフィスでは、多摩地域の実情や多摩パブの活動、事務所の雰囲気など、とても勉強になりました。

(文責 2023年度広報特別委員会委員 安達桂一)

5_多摩パブリック法律事務所1_入口
6_多摩パブリック法律事務所2_会議室