2025年度被災地(福島県浜通りエリア)訪問報告

1部76期 沖 直将

1 はじめに

災害対策復興支援委員会では、平成24年より震災被災地訪問を継続して行っております。令和7年度は、10月13日(月・祝)、14日(火)の2日間にわたり、福島県浜通り地域(双葉町、浪江町、大熊町、いわき市等)を訪問し、東日本大震災時に生じた福島第一原発事故による原子力災害の被災地を中心に、復興の現状と課題を現地で直接伺う機会となりました。

2 10月13日(1日目)

(1) 東日本大震災・原子力災害伝承館見学(双葉町)

最初に訪問したのは、双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館です。この施設は、地震・津波に加え、原子力災害という未曽有の複合災害の経過と教訓を伝えるものであり、館内には避難指示区域の変遷や、当時の混乱を記録した映像、証言記録が展示されていました。震災当時の資料や映像は当時の状況を生々しく伝えるもので、非常に印象的でした。さらに、復興に関する展示も多数されており、様々な最新の情報にも触れることができました。

(2) 道の駅なみえ・浜フェス2025見学(浪江町)

次に訪れた、道の駅なみえでは、ふくしま浜通り観光交流フェスティバル「浜フェス2025」が開催されており、地元産品の販売や屋台でにぎわっていました。浪江町の方々が前向きに地域の活性化に取り組む様子から、復興が「次の段階」に入っていることを実感しました。ここでは昼食として地元食材を使った料理をいただきました。

(3) 中間貯蔵施設及びCREVAおおくま・クマSUNテラス見学(大熊町)

午後は、大熊町にある中間貯蔵事業情報センター(CREVAおおくま)を訪問し、放射性物質を含む除去土壌の搬入・保管・再利用計画とその進行状況について説明を受けました。その後、この除去土壌等が貯蔵されている中間貯蔵施設を実際に視察しました。帰還困難区域に指定された地域には、震災被害にあった建物や車両等がそのままにされており、震災の爪痕が残されていました。整然と積まれた大量の黒いフレコンバッグの光景は、原子力災害がもたらした長期的影響の大きさを象徴していました。現地の生々しい状況を目の当たりにしたことで、いまだ復興は道半ばであり、そのために多くの方々が力を尽くしていることへの実感がわきました。

(4) 経産省による研修会とその後の懇親会

夜は、ホテル蓬人館にて経済産業省担当官から福島第一原発の廃炉・汚染水・処理水対策及び避難指示解除、産業復興の状況に関する講演を受け、復興に向けた取組みの状況と現在残る課題について理解を深めることができました。
懇親会には、経産省の担当官の方2名と、被災地と未災地をつなぐ事業を展開する能登発ベンチャーの株式会社Mutubi代表取締役の加藤愛梨氏や、大熊インキュベーションセンターに拠点を置くNPO法人inVisible理事長の山本曉甫氏も参加され、様々な立場の方から、有意義なお話を率直に伺うことができました。

3 10月14日(2日目)

(1) 大熊町役場との意見交換

大熊町役場では、震災・原発事故から14年を経た町の現状について説明を受けました。
町の約半分はいまだ帰還困難区域であり、震災時に住民登録のあった居住者約1,000人のうち帰還者は約300人にとどまっています。除染・解体により住宅ストックがほとんど失われたこと、医療・商業施設の不足、公共交通の不便さなど、日常生活を支えるインフラ整備が課題とされています。
一方、旧大野小学校を改築した「大熊インキュベーションセンター」では、ベンチャー企業の進出が進み、半導体やハイテク分野の新産業が芽生えています。復興を行政が主導せざるを得なかった経緯を踏まえつつも、現在は「生活再建と産業振興の両立」を掲げ、持続的なまちづくりを進めていることが報告されました。

(2) いわき市役所との意見交換

いわき市では、地震・津波・原子力災害という三重の被災からの復興状況について説明を受けました。津波被害地域では高台移転事業が完了し、豊間地区などでは子育て世代の流入が進むなど、明るい動きも見られます。一方で、原子力災害による風評被害が根強く、ALPS処理水の海洋放出に関連して観光や漁業への影響が続いていることが報告されました。
また、双葉郡などからの避難者約1万人がいわき市内に居住しており、自治体間での住民票の扱いや支援の在り方など新たな行政課題も生じています。防災面では、防災士の養成や全市民参加型の訓練、LINEを活用した防災情報配信など、ソフト面の取組みも行われており、他自治体のモデルケースとなり得るものでした。

(3) 浜通り地域の若手事業者(HAMADOORI 13)との意見交換

午後はいわき産業創造館にて、浜通り地域の若手事業者グループ「HAMADOORI 13」の皆様と意見交換を行いました。
同団体は震災を経て再び浜通りに戻った同世代の事業者らが設立した団体で、浜通り地域でのベンチャー創出や、地域事業に関する情報共有と互助のプラットフォームとして活動しています。
同団体のメンバーからは、ガソリンスタンド事業再開時の厳しい除染規制、建設・解体業界での人手不足や多重下請け構造の問題、罹災証明の実務と制度運用の難しさ、そして地域に新産業を呼び込むためのインキュベーション拠点運営など、非常に具体的かつ現場感のある話を伺うことができました。
行政だけでは復興は成し得ない、民間が地域を動かす力になるという共通認識のもと、能登半島地震への支援活動や制度改善への提言など、復興経験を全国へ還元する姿勢に強い印象を受けました。

4 おわりに

今回の被災地訪問では、福島第一原発事故の影響を受けた浜通り地域の復興が、物理的な整備から「人と産業の再生」へとフェーズを移していることを実感しました。行政・企業・地域がそれぞれの立場から課題に取り組む姿勢は、災害復興の持続的モデルとして他の地域についても示唆を与えるものと思われます。
さらに、今回の訪問では、同じ浜通り地域の中においても、エリアごとに、復興の進行度合いや、抱えている課題が様々異なっていることにも気づかされました。それぞれの違いを意識して分析を進めることが、他の地域に対する多角的な支援の提供につながっていくのではないかと感じました。
被災から14年を経た今もなお、原子力災害の影響は終わっていません。風評被害、帰還問題、財産管理、地域経済の自立など、法的課題は多岐にわたります。そのような課題を決して他人事とせず、法友会として、引き続き現地の声を聞き、法律家としての支援のあり方を模索していくことの重要性を再認識しました。
今回の訪問にご協力くださった関係者の皆様に深く感謝申し上げます。会員各位には、引き続き災害対策復興支援委員会の活動へのご理解とご協力をお願い申し上げるとともに、まだ参加されたことのない方々にも、ぜひ今後の被災地訪問にご参加いただきたいと思います。