令和5年10月1日~10月2日 被災地訪問記
4部75期 背戸芙実菜
1 はじめに
災害対策復興支援委員会では、平成24年から震災被災地訪問を継続的に行っております。令和5年度第1回目として、10月1日、2日の2日間にわたり、岩手県陸前高田市を訪問しました。陸前高田市へは訪問を重ねており、今回が9回目の訪問となりました。
2 10月1日(1日目)
(1)東日本大震災津波伝承館見学
まず、東日本大震災津波伝承館を訪問しました。東日本大震災津波伝承館は、令和元年9月22日に開館した岩手県営の施設で、東日本大震災津波の事実と教訓の伝承を目的としています。最初に避難ルートの確認があり、施設の立つ場所はまさに被災地で、また災害が繰り返し起こりうるもので、津波の脅威が過去のものでないことを意識させられました。震災当時の資料や映像にも、ほとんどが初めて見るものであったこともあり、強い衝撃を受けました。
(2)高田松原津波復興祈念公園、震災遺構見学
次に、高田松原津波復興祈念公園を見学しました。国営の追悼施設であり、前述の伝承館を含む周辺が一体として整備されています。公園の設計にあたり、広島の平和記念公園が参考にされたと聞き、広島出身者として、訪問以前はどこか遠く感じてしまってもいたようにも思う東日本大震災被災地域に対して、親近感、連帯感を覚えました。
奇跡の一本松、気仙中学校等の震災遺構の中でも、とくに気仙中学校は被災当時のまま保存されており、被災状況を生々しく伝えていました。
(3)陸前高田ドライビングスクール田村会長講演
震災直後、高台にある自動車学校の敷地を開放し救援センターの役割を担ったほか、現在でも複数の株式会社の代表を務め、民間からの復興に精力的に活動されている陸前高田自動車学校取締役会長、株式会社 醸 ほか代表取締役である田村満氏に講演いただきました。
震災の話そのものよりも、ソーシャルビジネスの意義、展望や夢を持つことの大切さなどについて熱く語っておられ、田村氏の強烈な個性とどこまでも前を向く姿勢が印象的でした。
(4)懇親会
懇親会には田村満氏や過去の訪問で語り部として講演くださった釘子明氏も参加され、有意義なときとなりました。
3 10月2日(2日目)
(1)栃ヶ沢災害公営住宅の住民の皆様とのラジオ体操、お茶っこ会
平成28年に完成した災害公営住宅である栃ヶ沢団地の住民の皆様と交流しました。大変歓迎していただき、多くの方からお話を伺えました。災害公営住宅でも、高齢化や、コミュニティ活動の維持の難しさ、不十分な「買い物難民」対策など、他地域でも問題となる問題があるが、災害公営住宅には入居条件として収入制限があるためより若い世代が出て行ってしまいやすいなど、問題が顕在化しやすい状況があると感じました。また、住民の方から、建物などがきれいに整備されたが、無理やりもう震災・復興は終わったのだということにさせられている気持ちだという声があり、心が痛み、考えさせられました。
(2)福田利喜市議講演
福田利喜陸前高田市議から、同市の復興の現状と課題等について伺いました。行政の復興への意思決定に住民のニーズが反映されず、実情に合わない用途地域指定等が見直されないことなどから、土地の有効活用が進まず復興が阻害されているなどの課題があることをお話しされました。
(3)陸前高田発酵パーク「CAMOCY」見学
1日目に引き続きご協力くださった田村満氏の案内で、発酵に関するエンターテイメント施設である「CAMOCY」を訪問しました。地元産の木材で建物、什器が作られ、観光客、地元の方々でにぎわう施設で、食事と買い物を楽しみました。味噌、醤油、惣菜、パン、チョコレート、クラフトビールなど様々な発酵食品の店舗がありました。商品販売だけでなく、発酵文化の発信について海外まで視野に入れて、発酵研究、発酵文化の中心地となろうとする意気込みを感じました。
(4)「陸前高田しみんエネルギー株式会社」講演、意見交換会
再生可能エネルギーを提供し、電力の自給率を高め、地域内で経済を循環させることなどを目指している、陸前高田しみんエネルギー株式会社の大林孝典氏に講演いただきました。現実の電力供給量などまだ課題は多いものの、行政とも連携し事業を拡大していること等を伺えました。ビジネス的にも非常に関心の高い話題のためか、講演後はとくに活発な質疑応答、意見交換が行われていました。
4 おわりに
私は今回初めて被災地訪問に参加させていただき、大変有意義な時間を過ごすことができました。初めて知ることや感じることばかりでしたし、自らの災害への備えの必要性も痛感しました。
今回訪問した被災地では目に見える形での復興はだいぶ進んだように見え、また時間の経過とともに法的課題も変化しているけれども、今後も法友会として活動を継続していくことは非常に重要だと感じました。今回交流した栃ヶ沢災害公営住宅の住民の方々の、「また来てね。」の声が心に残っています。
今回の企画の実現のために尽力くださった方々に感謝申し上げます。会員の先生方には引き続き災害復興支援委員会の活動への応援をお願い申し上げるとともに、とくにまだ一度も活動に参加されたことのない先生方に、ぜひ被災地訪問に参加していただきたいと思います。