業革第6回研修「脱炭素社会(CN)の実現とGXをめぐる法律問題~再エネ訴訟等を素材として~」レポート
1部67期 藤原亮太
令和5年10月27日(金)、弁護士会館において、今年度第6回目となる業務改革委員会研修「脱炭素社会(CN)の実現とGXをめぐる法律問題~再エネ訴訟等を素材として~」がハイブリッド方式により開催されました。
ご担当いただいた講師は、信州大学学術研究院(社会科学系)経法学部教授の小林寛先生です。小林先生は、学生時代から環境法分野に興味を持ち、弁護士として研鑽を積んだのち、環境法分野の教員・研究者としての道を歩まれるなど、環境法分野の問題について大変造詣の深い先生です。
参加人数については、合計19名、うちリアル参加は6名に及び、大変盛況となりました。
講義は、「はじめに(環境法が目指す社会など)」、「世界の温室効果ガス削減目標の比較」、「世界の再エネ導入状況と2030エネルギーミックス」、「脱炭素社会(CN)の実現に関する近時の法制度」、「再エネの必要性と新たな環境問題の発生」「日米における主要な再生可能エネルギー関連訴訟」「むすびに代えて~導出される示唆~」という章立てで行われました。
環境法の基本理念として重要な「持続可能な発展」について、環境と開発に関する国連会議(1992年のリオ宣言など)の経緯や、日本国内における根拠条文を用いて、詳しく解説していただきました。
世界の再エネ導入状況では、主要国の発電電力量に占める再エネ比率が資料を用いて紹介されました。カナダでは、2020年度において、再エネの1つである水力発電の占める割合が、発電電力量全体から見ても60%(日本は7.8%)を占めており、起伏の激しい河川が多いことで水力発電の環境が整っているところ、日本では同様の環境を整備することは容易ではないことを理解することができました。
脱炭素社会(CN)の実現に向けた近時の法制度として、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(GX推進法)や脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律(GX脱炭素電源法)などの条文を参照しながら、化石燃料(特に石炭)関連業者の失業なき労働移動、原発依存度の低減、地域共生型の再エネ導入拡大といった、今後取り組むべき重要な課題について、丁寧に解説していただきました。
日米における主要な再エネ訴訟では、裁判例の資料を用いて、個別の判断について、小林先生から貴重なご意見を伺うことができました。
訴訟にはなっていない事案について、計画自体に法令等の違反がない場合であっても、地元自治体や住民の強い反対により、計画を頓挫せざるを得なくなった事案があることを伺い、再エネを導入する際の協議会や審議会の役割が重要であることを認識することができました。長野県飯田市の再エネ導入審査会では、弁護士が審査会の一員となっていることから、再エネ導入にあたり、弁護士に期待される役割は、少なくないのかもしれません。
研修会後には弁護士会館の地下で講師を囲んで懇親会を開催しました。小林先生だけでなく、小林先生の大学時代のゼミ同級生であり、小林先生をご紹介いただいた方や司法試験合格後、同期の小林先生と一緒にニューヨークへ旅行された某会員も参加してくださったこともあり、昔話に花を咲かせながら、講義での質疑応答に引き続き闊達な議論がなされ、有意義な懇親の機会となりました。
業務改革委員会では、今後も有益な研修を提供しようと思っておりますので、興味のある研修には奮ってご参加ください。